「幽霊なんて怖くないッ!!」
そう言ったあと、オサキは俺の肩にピョンと飛び乗った。
多分、薄暮さんに電話が繋がったら自分で話す気なんだ。
だから俺はその行為に対して何も言うことはせず、オサキを肩に乗せた状態で携帯を操作した。
……けれど、薄暮さんの携帯は電源が入っていないのか繋がらない。
「薄暮さんの携帯繋がんないや。 双葉ちゃんと一緒らしいから、そっちにかけるね」
『うん』
着信履歴から双葉ちゃんの番号を引っ張り出し、ボタンを押す。
……よし、双葉ちゃんの方は繋がった。
コール音が2回、3回と鳴り、4回目の途中で双葉ちゃんが出た。
『もしもし氷雨くん? どうしたの?』
「あ、さっきぶり。 実はさ、薄暮さんと話したいって奴が家に来てるんだ」
『え? 薄暮さんと話したい人?』
「人っていうか、妖怪ね」
その言葉のあと、オサキの方に携帯を向けた。
『もしもし、杏チャン? 久しぶりだね』
『えっ……オサキ……!?』
『うん、僕だよ。 早速だけど、一縷さんと話したいんだ。 少し代わってくれるかい?』
『わ、わかった!! ちょっと待ってて!!』
双葉ちゃんの慌てたような声が電話の向こう側から聞こえてきて、そのあとに薄暮さんを呼ぶ声がした。
……オサキは本当に薄暮さんたちの知り合いなんだな。 なんてことを今更ながらに思う。
しかも、双葉ちゃんの慌てようからするに、相当嬉しい再会らしい。
『オサキっ!! 私と薄暮さん、今からそっちに行くからっ!!』
電話の向こうから そんな声がした直後──。
オサキが返事をするか否かのうちに、パッと目の前に双葉ちゃんと薄暮さんが現れた。