「幽霊なんて怖くないッ!!」
「オサキ!! 本当にオサキだっ!!」
『やぁ、杏チャン。 病院で会った時 以来だね』
慌てて駆け寄ってくる双葉ちゃんは、今にも泣き出しそうな顔だ。
そんな彼女の肩へとピョンと飛んで移ったオサキは、彼女の頬に体をすり寄せて 本当に嬉しそうな顔だった。
その近くに立つ薄暮さんは、安心したような顔で微笑んでいる。
そして、突然 目の前に現れた二人に驚く我が母 雨音さん。
「ギャー、予想以上のイケメン!!」
……って、驚いてるのはそっちかよ。
普通は瞬間移動の方に驚くもんだけどなぁ……。
「薄暮さん、コレうちの母です。 ごめんなさい、不老不死や瞬間移動のこと話しちゃいました」
「あぁうん、大丈夫。 全部話すつもりで飛んできたから。
雨音さん初めまして、僕は薄暮 一縷と言います。 早速ですけど、こちらの家に結界を張ってもいいですか?
オサキと話す間、襲撃があると面倒なので」
薄暮さんは僅かに頭を下げたあと、雨音さんを見てニコッと笑った。
それに対する雨音さんは『どうぞどうぞっ!!』と満面の笑み。
いい歳したオバサンが少女みたいに顔を赤らめてる姿なんて、誰得だ?
……と口に出して言ったら 確実に殴られるから、黙っておこう。
「薄暮くん、結界を張るの手伝うよっ!! 私も結構強いの張れるんだっ」
「ありがとうございます、助かります」
「よし、じゃあ一緒に外に行こうっ!! 氷雨、なんかあったらすぐに呼ぶのよー? ささっ、薄暮くん こっちこっち!!」
ニッコニコの上機嫌で薄暮さんの手を握る雨音さん。
ほんと、誰得だっつーの。
『杏チャン、八峠クンは?』
「あ、今ね、眠ってるの。 いっぱい幽霊と戦ったから力を回復させてるところなんだ。
八峠さんの家に張ってある結界は凄く強いものだから、そのままで大丈夫だろうって、薄暮さんが」
『そうか。 じゃあ八峠クンは、今 一人なんだね』
そう言ったオサキは下を向き、一瞬だけ不安そうな顔をしたけれど、すぐに前を向いて床へと移動した。
『実はね、今回の襲撃は僕のせいなんだ』