「幽霊なんて怖くないッ!!」
『秋さんが亡くなったあと、僕は一人でカゲロウの行方を追っていたんだ』
……秋、って、最近亡くなった『カゲロウの血』だよな。
双葉ちゃんの、大切な人……。
『以前、杏チャンを殺すためにカゲロウは姿を現しただろう?
結局はニセモノのカゲロウだったけれど、でも匂いはカゲロウ本人に近いものだった。
300年前の匂いを頼りに探すのは不可能だけど、数日前の匂いなら可能だ。
その匂いを頼りにカゲロウを探し、そして僕は彼の ねぐらを発見したんだ』
「……っ……」
『みんなが僕の気配に気付かないように、カゲロウも僕の気配を察知することは出来ないみたい。
僕はね、相討ちでもいいと思って ねぐらに突入したんだよ』
……オサキの気配は誰にも感じ取られることはない。
カゲロウにも、だ。
だからこそオサキは、きっと背後からの不意打ちでカゲロウを倒そうとしたんだ。
『でもそこにカゲロウは居なかった。
代わりにそこに居たのは、ユキという若い女だったんだ』
「……え?」
『若いと言っても、年齢は300歳を越えているんだけどね』
……300歳を越えてる女っ!?
「ちょっ……不老不死は薄暮さんとカゲロウだけなんだろッ!? なのに、なんでっ……!!」
『カゲロウの力だよ。 カゲロウの力がユキを不老不死へと変えているんだ』
「そんなっ……いったいどうやって……!!」
『簡単さ。 他人の命を奪い、ユキに与えるだけだ』
「……っ……!!」
『自分の身代わりのためじゃない。 ユキのために『カゲロウの血』を殺していたんだ』
『カゲロウの血』……八峠さんや双葉ちゃんが狙われる理由は、本当の目的は、ユキという女に命を与えるためだったのか……?