「幽霊なんて怖くないッ!!」


『ユキはね、他人の命を犠牲にして自分が生きているということを 知らなかったんだ。
カゲロウの力によって生かされていることは知っている。 だがカゲロウが人を殺していることは知らなかったんだよ。
殺された人の命で自分が生きているということを、彼女は知らなかったんだ』

「……オサキは、ユキさんに本当のことを話したんだね?」

『えぇ、その通り。 カゲロウと戦っている一縷さんのことや、大切な人を失った八峠クンや杏チャンのことを 全部言いました。
そして彼女は僕の目の前で自害した。それが彼女なりの責任の取り方だったってわけさ』




……自害。

つまり、自殺したってことか……。




『ユキが死んでも犠牲になった人々が生き返ることはないけれど、それでも彼女は そうするしかなかったんだと思う。
自分が死ねば この先の『カゲロウの血』は解放される。 他人の命を犠牲にしてまで生きたくはない。 そんなことをするくらいなら今すぐに死ぬ。 ──それが彼女の出した答えだった。
そして、あと数秒で絶命するという時……カゲロウが戻ってきたんだ』

「……」

『カゲロウは絶命寸前のユキに 自身の力を注ぎ込み、なんとか命を繋いでる状態だ。 けれど力は全く足りていない。
だからカゲロウは強い力を求めて幽霊を動かしているんだよ。 と言っても、統制は全く取れていないけどね』




……今までの襲撃と全く違う動きをしているのは、カゲロウが焦っているから?

だからカゲロウは無茶苦茶なやり方で『カゲロウの血』を狙っている。 ユキって人の命を、助けるために。


……でも、なんで『カゲロウの血』なんだ?

俺や雨音さんだって今までずっと幽霊に狙われてきたけれど、今回の襲撃の矛先は『カゲロウの血』だけだ。

なんでこっちは狙わない?

雨音さんだって相当強い力の持ち主なのに、なんでカゲロウは『カゲロウの血』だけを狙っているんだ?




「オサキちゃん、私たちもずっと幽霊に襲われてきたのね。 それは多分カゲロウがやってたと思うの。
でも今回は狙われていない。 それは、なんでかな?」




俺と同じことを思っていたらしい雨音さんがオサキに問う。

だけど、それに答えたのは薄暮さんだった。


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