「幽霊なんて怖くないッ!!」
その音は、空から何かが降ってきたようなものだった。
『何か』が、侵入してきた……?
「……まだ、完全には復活してない状態なんだけどな」
力の回復状態は、7割といったところだろうか。
まぁ、6に近い7だから、結構不安ではあるけれど。
だけど『何か』に侵入されたのは間違いないと思う。
侵入されたんだったら迎え撃つしかない。
「……」
部屋の隅に転がっていた警棒を手に持ち、懐にはお札を忍ばせる。
自分の身を守るためのお札が3枚と、相手を浄化するためのお札が5枚。
これでなんとか防げればいいんだけどな……と、そんなことを思いながら、苦笑い。
2階の部屋に何が居るのかはわからない。
だけどそこには、『何か』が居る。
……それが敵だった場合、結界を抜けてくるほど強い奴だから、俺に勝ち目は無いかもしれない。
逃げたくはないけれど、生きるために逃げざるを得ないかもしれない。
「……俺が死ぬわけには いかねぇもんな」
杏を守るためには、生きて戦うんだ。
「……よし、行くか」
リビングを出て階段をゆっくりと上り、目的の部屋の前へと到着する。
……『何か』が居るはずなのに、なんの気配も感じない。
なんだろう。
中に居るのは、幽霊以外の『何か』か……?
(……そういえば、前もこの部屋だったよな)
オサキのニセモノ──カゲロウの使い魔が現れたのもこの部屋だった。
あの時 俺は、使い魔の気配は最後まで感じることが出来なかった。
もしかしたら、中に居るのはカゲロウの使い魔か?
「……」
ゆっくりと静かにドアを開く。
集中、集中、集中……。
前後左右、上下にも気を配りながら部屋の中を見ると……。
「久しぶりだな、八峠」
……そこに居たのは、和服を身にまとった若い男だった。