「幽霊なんて怖くないッ!!」


「……共に生きていく。と言っても、雪はただの人間だ。
不老不死である陽炎は歳を取らないけれど、雪はどんどんと成長し、老いていくだろう?
陽炎はな、大切な人を失うことに日々恐怖していたんだ」

「……」

「力が完全に戻った陽炎は、雪に永遠の命を与えようと考えた。
不老不死の水は枯れてしまったから使うことが出来ないけれど、陽炎の力があれば命を保つことが出来る。
だが、そのためには多くの犠牲が必要だったんだ」




……それが、『カゲロウの血』か。


なるほどな。

カゲロウはユキと生き続けるために、襲撃を再開させたのか。




「……雪は、陽炎が他人の命を使っていることを知らずに過ごしていた。
陽炎の力は凄い。 陽炎とずっと一緒に居られるなんて夢のよう。 と、いつも微笑んでいたよ」

「……で、お前が言いたいことはなんだ? 昔の話だけをしに、わざわざ来たわけじゃないだろう?」

「せっかちな男だな。 あと少しだけ、黙って聞いていられないか?」




クスリと笑った使い魔は、真っ直ぐに俺を見て静かに言った。




「オサキギツネが雪に真実を話した。 他人の命を犠牲にして生きていたということを知った雪は、当たり前のように死ぬ道を選んだよ」




……オサキ。 アイツ、やっぱりカゲロウの行方を追っていたのか。

で、奴の居場所を掴んだんだ。

だが そこに居たのはユキって女で、オサキはその女にすべてを話した、と。




「俺と陽炎が家に戻った時、雪の命は尽きかけていた。
陽炎はそんな雪に力を注ぎ、ギリギリのところで命を繋ぎ止めている。 そして俺は、オサキギツネを追ってこの街へとやってきたんだ」

「……」

「だが、俺自身の力はほとんど陽炎に預けてきたから、どうやってもオサキギツネに追いつくことは出来なかった。
だから俺は力を求めて人間を殺そうとしたんだ。 まぁ、返り討ちに遭ってしまったがね」


「……え……」




……もしかしてその人間って、雨音さん?

じゃあコイツの傷は、雨音さんが殴ったから出来たってことか……。





「あのオバサン、どんだけなんだ……」

「なぁ八峠」

「んだよ」


「陽炎のために死んでくれないか?」




……は?


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