「幽霊なんて怖くないッ!!」
「陽炎に力を渡し、雪を助けて欲しい」
「……」
「雪を失った陽炎は 暴走して世界を滅ぼすだろう。 だが、『カゲロウの血』であるお前の力があれば、世界を救うことが出来るんだ」
……ユキが死ねば、暴走したカゲロウの手によって世界は滅ぶ。
だが、俺の力──俺の命をユキに捧げれば、カゲロウが暴走することはない。
確かにそうかもしれないが、でも……。
「……俺の命を使って蘇ったとしても、ユキはまた死ぬ道を選ぶんじゃないか?」
すべてを知ったユキは、自らの死を選んだ。
オサキに殺されたわけではなく、自分で自分の命を絶とうとしたんだろう?
だったら、俺が命を捧げようが捧げまいが関係無い。
彼女が選んだ道は、『死』なんだ。
「お前がユキを救いたいのはわかる。 カゲロウを止めたいのもわかる。
だがな、俺は絶対に命を捧げたりはしないよ」
俺も、杏も、他の『カゲロウの血』だって精一杯に現在(いま)を生きている。
秋や慧も、親父もお袋も、みんなみんな精一杯に生きてきた。
……大切な人の命を守りたいって思うのは、きっとみんなおんなじだ。
でも、だからって人の命を奪っていいわけがない。
「ユキはいずれ死ぬ。 それは彼女が選んだ道だから、カゲロウは受け止めてやるべきだ。
だがカゲロウはそれに納得することなく、十中八九 暴走するだろうな」
「そうなれば結局お前は死ぬぞ? お前の大切な仲間も全員だ」
「そうなる前に止めりゃいいんだろ?」
「……なに……?」
「俺は今までずっとカゲロウを殺すために動いていた。 そしてこれから先もそうだ。
カゲロウが暴走する前に、俺が奴を殺してやるよ」