「幽霊なんて怖くないッ!!」
初めから……ハクと行動を共にするようになってからずっと、それ以外のことは考えていなかった。
俺はカゲロウを殺すために生きてきた。 奴が死ねば、すべてが終わるんだ。
「カゲロウの居場所を教えろ。 俺がすべてを終わらせてやる」
「……本気で、陽炎を殺す気か……?」
「あぁ、奴が死ねば世界は救われるからな」
「ふふっ……そうか、陽炎が死ねば、か……。 俺とお前は、正反対のことを言っているな……」
「きっと俺の方が当たりだよ。 ユキが死を望んでいる限り、カゲロウが生を望んでいる限り、未来は変わらない」
だったら世界が滅ぶ前にカゲロウを殺すしかねぇだろ。
そうすること以外には、何も残っていないんだから。
「カゲロウはどこに居る? 奴の居場所を教えろ」
「……」
「おい、使い魔。 カゲロウはどこだ? おいっ」
使い魔の体を乱暴に揺するけれど、返事は無い。
まだ息はあるが、そう長くは持たないな……。
「死ぬなよ、おい。 使い魔っ!!」
「……俺の名は斎(イツキ)だ」
「くっそ、喋れるならさっさと答えろっつーの。 おい、イツキ。 カゲロウはどこに居る?」
「……手を」
「あ?」
「俺が連れていく」
「……っ……おいっ!?」
──イツキに腕を掴まれた瞬間、世界がモノクロへと変化した。
……そして、室内に居たはずなのに、今は街の上空を飛んでいる。
その街は俺の住んでいる街で、よく知っている場所だけど、様子が変だ。
モノクロという時点で既に変だが、街を行く人も車も、すべてが停止しているらしい。
時間の止まっている世界を、移動しているのか……?
「……っ……」
再び、場所が変わる。
次に見えたのは どこかの山だ。
風に揺らぐ木も、羽ばたく鳥も、動物も、やっぱりすべてが停止している。
イツキは空中を歩くようにどんどんと奥へと進んでいき、とある場所で足を止めた。
「……あの小屋に陽炎が居る。 雪はまだ生きているようだ」
イツキがそう言った時、モノクロの世界がカラーへと戻る。
誰の手も入っていない深い山奥……秘境と言えるような場所に、その小屋はひっそりと建っていた。