「幽霊なんて怖くないッ!!」
「ハク。 コレはやっぱりカゲロウか?」
「えぇ、カゲロウですね」
「……ったく、面倒臭いな……」
カゲロウ。
二人の会話の中に出てきたその言葉は、私の知ってる『カゲロウ』のことだろうか?
『カゲロウの血』……私や秋さん、そして八峠さんの力のことをいう、あのカゲロウ……?
「おい、双葉 杏」
「は、はいっ……!?」
「ここはしばらくハクに任せ、俺は一時離れるぞ」
「えっ……ちょ、ちょっと八峠さんっ!?」
「何かあったら電話しろ。 まぁ、しばらくは何もないと思うがな」
コーヒーを最後の一滴まで飲み干した八峠さんは、最初と同じように気怠そうな顔で立ち上がり、部屋を出ていった。