「幽霊なんて怖くないッ!!」
「……人間というのは、本当にわからない生き物だな」
「でも嫌いじゃないだろ?」
「そうだな。 お前たちのような馬鹿は、嫌いじゃないよ」
「ちょ、俺らは馬鹿じゃ──」
と、氷雨くんが言葉を放っている途中で、イツキさんが雨音さんと氷雨くんの手を引っ張った。
二人の手を重ね合わせ、最後に私の手を重ねた瞬間──世界の色が変わった。
……ううん、色が、無くなった……?
「うっわ、何コレ!? 気持ち悪ッ」
「喋っていると舌を噛むぞ?」
「はぁっ!? ちょ、マジでなんなんだよっ!?」
──モノクロの世界の中で、私たちは空を飛んでいる。
薄暮さんの瞬間移動は、その名の通り瞬間で移動するけれど、イツキさんのコレは、全然違っていた。
停止した時間の中で、世界を駆ける……それが、イツキさんの力……。
「すぐに着く。戦いに備えろ」
「……っ……」
もうすぐ目的の場所へ……そこに、カゲロウが居るのかもしれない。
さっきまで騒いでいた氷雨くんも、驚きの表情だった雨音さんも、そして私も。
それぞれが気を引き締めて戦いに備えていた。
「降りるぞっ」
イツキさんの声を合図に、モノクロだった世界が再び色を帯びた。