「幽霊なんて怖くないッ!!」
4 終わり
誰のために
【終わり】
【薄暮side】
………
……
…
オサキと共に飛び、小屋から8キロほど離れた場所へと降り立った。
何故その距離で降りたのか? ……それは、カゲロウがその場所に居たからだった。
「久しぶりだね、薄暮」
「……」
「悪いがこれ以上は近づかないでくれ。 雪を巻き込みたくはないんだ」
……なるほど。 ユキさんを守るために敢えてここで待っていたというわけか。
そしておそらく、もっともっと離れるつもりだろう。
僕らの力が本気でぶつかれば、8キロなんて距離はあって無いようなものだから。
「オサキ、5秒後に小屋へ向かって走って。 八峠さんが居るはずだから、彼と合流するんだ」
『わかりました』
「カゲロウは僕が引きつける」
5秒。
その短い時間の中でカゲロウとの間合いを詰め、小刀を抜く。
カゲロウはクスリと笑いながらこちらの攻撃を回避し、即座に反撃してきた。
今度はこちらがソレを回避したのち、また小刀で反撃だ。
そしてその間に、オサキは小屋へと向かって駆け出していた。
「オサキギツネは、昔よりも速く動けるようになったようだね」
カゲロウは相変わらずの笑顔でそう言った。
オサキを追う気配は全く無く、余裕の表情だ。
「……ユキさんは今にも死にそうなんだろう? なのに、随分と余裕があるね」
「雪は死なないよ。 もうすぐ『カゲロウの血』が手に入る。 ここでお前を殺せば、俺たちは再び永遠を生きることが出来るんだ」
……もうすぐ『カゲロウの血』が手に入る?
それは、八峠さんを殺したということか……?
……いや、『もうすぐ』という言葉は、『今はまだ』ということだ。
まだ『カゲロウの血』は手に入っていない。 八峠さんは、まだ生きている。
「……カゲロウ。 彼女は自ら死を選んだんだろう?
他人の命を犠牲にしてまで生きたくはない……そう思ったからこそ、彼女は自分で自分の命を終わらせようとしたんじゃないか?」
「あぁ、その通り。 雪を裏切ったのは俺だよ。
遙か昔、もう人殺しはしない雪に約束したが、雪との時間を生きるためには、犠牲が必要だったんだ」
「……彼女はきっとまた死を選ぶよ。 お前が何度助けたとしても、彼女はずっと……」
「わかっているさ。 わかっているとも。 俺はね、お前との戦いが終わったら、雪の記憶を消そうと思っているんだ」
……記憶を、消す……?
長い時間一緒に過ごしてきたのに、その時間を消すというのか……?