「幽霊なんて怖くないッ!!」
強力な気を纏った拳と、咄嗟に 不安定な気を纏わせた小刀。
どちらが強くて硬いかは明白だった。
「俺の勝ち」
──弾かれる小刀。
カゲロウの拳がぶつかった体は容赦なく吹っ飛ばされた。
……いくつもの骨が砕かれ、体の中に血が溢れる感覚に襲われる。
いや、実際に出血しているんだと思う。
どこから とか、どのように とかは、わからないけれど……でも、多分 致命傷だ。
不老不死の体だから大抵の傷は治る。
でも今は、治るという動きが全く無い。
呼吸が苦しい。
血が止まらない。
修復、されない……。
「呆気ない幕切れだな、薄暮 一縷」
「……」
「あなたとの戦いを、もっと楽しみたかったよ」
その言葉ののち、カゲロウの気配が消えた。
……彼女の場所へ戻り、彼女を回復させる。 それがカゲロウの目的だ。
八峠さんが殺される。 彼のそばに行ったオサキも、瞬時に命を奪われると思う。
「……情け、ないな……」
カゲロウの隙をつくはずが、逆に隙をつかれてしまった。
「……死、か……」
……カゲロウに殺されるなんて、最低最悪な死に方だ。
でも、諦めるしかないのかな……。
「……ふっ……ふふっ……ふふふっ……」
……おかしいなぁ。
数百年生きてきたくせに、もっと生きていたいと思ってしまうのはなんでかな?
早く死にたいと思ったこともあった。
でもカゲロウを止めるまでは死ねない と思って生きてきた。
そして今は、死にたくないと思ってる。
いつからそう思うようになったのかな?
いつから、『生きたい』と思い始めたんだろう?
──『俺の命をくれてやる。 だからお前も俺に一生 尽くせ』
……八峠さんと一緒に行動するようになってからか……?