「幽霊なんて怖くないッ!!」


「……そうか、あの人のせいか……」




3年前、あの人がそう言ったからだ。

あの人は僕に『俺の命をくれてやる』と言い、その見返りとして『一生 俺に尽くせ』と笑顔を見せた。



……彼と出会う前も、『カゲロウの血』を持つ人たちと多くの時間を共に過ごしてきたけれど。

『俺に一生 尽くせ』と言ったのは、あの人だけだった。




「……全部、あの人のせいだ」




あの人があんなことを言わなきゃ、僕は素直に死を受け入れたはずなのに。

あの人の言葉のせいで、このままでは死ねなくなってしまった。




……八峠さん。

あなたはまだ生きているんでしょう……?


だったら僕も……僕もまだ、ここでは死ねないよ。




「……大丈夫、まだ行ける」




『大丈夫』という根拠は無い。

だけど、僕はまだ行ける。




「……カゲロウ……お前の好きにはさせないよ」




消えるのは、お前の方だ。


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