「幽霊なんて怖くないッ!!」


【杏side】




………

……




真っ暗な世界の中で、私は一人 座り込んでいた。


どこを見ても闇。

前も後ろも、上も下も横も、全てが暗闇だった。




「……みんな、大丈夫かな……」




数秒に一度出るため息と、全身に感じる疲労感。

そんな中で考えるのは、大切な仲間のことだった。


ユキさんを助けるために力を使った雨音さんと氷雨くんは、無事だろうか?

オサキと薄暮さんは、カゲロウとの戦闘中……?


そして、どこに居るかもわからない八峠さん……。


みんなのことが、とにかく心配だった。




「……どうやったら抜け出せるんだろう?」




私は多分、力を使いすぎたせいでこの闇へと落とされた。

でも、前回の時は……幽霊と戦ったあとに気を失った時は、こんな闇なんて見ていない。


何も考えずに ただただ眠っていた前回と今とでは、全てが異なっていた。








「この闇はさ、あの世とこの世の狭間なんだよ」

「えっ……」




──暗闇の中で、誰かの声がした。

ううん、『誰か』じゃなくて……この声は……。




「……八峠、さん……?」

「おう、俺ですけど?」

「……っ……八峠さんっ!!」




姿は見えないけれど、でも、八峠さんは確かにここに居る……!!




「どこっ……どこに居るのっ!?」

「俺にもわかんねーよ、お前の姿は見えてねぇんだから」

「でもっ、近くに居るんですよねっ……!?」


「さぁな。 ココは普通とは違う世界だから、遠くても声は届くんじゃねぇの?」

「……だけど、居るんですよね……?」

「居るよ。 ちゃんと居る」




……ちゃんと居る。

そう言ってくれたことが嬉しくて、涙が自然と頬を伝っていった。




「よかった……無事だったんだ……」

「んー、それもよくわかんねぇな。 そろそろ死ぬかもしれねぇよ?」

「え……なん、で……」


「言っただろ? ココはあの世とこの世の狭間の世界だ。
つまり、いつ死ぬかもわからない状況に置かれてるってことだ」




うそ……それじゃあ私たちは今、死にそうな状況ってこと……?


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