「幽霊なんて怖くないッ!!」
「だ、だけどっ……そこに八峠さんは居なかったですよっ……!?」
「そうだな。 誰かが俺を別の場所に運んだか、何かが俺の亡骸を食おうとして巣にでも運んだんじゃねぇの?」
「ちょっ、なんでそんなに落ち着いてるんですかっ!! 早く戻って、八峠さんの体を探さなきゃっ……!!」
「んなこと言ってもなぁ、ココはそう簡単に戻れるような場所じゃねぇんだよ」
そう言った八峠さんは、苦笑しているみたい。
声に覇気が無いというか、諦めたというか……言葉の感じはいつもと同じなのに、声はどこか弱々しい。
「この場所はな、もうすぐ死ぬって奴の魂が一時的に保管される場所なんだ。
三途の川がーとか、お花畑がーとか、よく聞く話だろ? でも実際は闇なんだよ。 なーんもない ただの闇。
その中で気持ちは段々沈んでいって、体も闇の中に沈められていく。 そしてそのまま死ぬわけだ」
「そんな……」
「元の世界に戻る奴も居るけど、割合で見れば1パーセント未満ってところじゃねぇか?
ほんと、参ったよ。 前回は戻ることが出来たけど、今回はちょっと厳しいかもしれねぇな」
「……前回……?」
それって、八峠さんは前にもココに来たことがあるってこと……?
「10年前、馬鹿なガキを助けるために死にかけたんだよ」
……10年前……。
「だからあれほど言っただろ? 『何があっても札を大事に持っとけ』って。
それなのにお前は俺の言いつけを破り、裏山で死にかけたわけだ」
「……え、ちょ……えぇっ……!?」
馬鹿なガキって、私のこと……!?