「幽霊なんて怖くないッ!!」


「ちょ、ちょっと待ってください!! 確かに私は10年前に死にかけましたけど、でも、当時の私は八峠さんのことを知りませんでしたよ!?」

「お前が忘れてるだけ。 俺は覚えてるもん」

「……嘘だっ。 絶対嘘だっ!!」


「こんな時に嘘なんか言うかってんだ」




そう言った八峠さんは、一呼吸置いたあとに言葉を続けた。




「10年前のあの日は、親戚の集まりだっただろ?」

「は、はい……」

「俺は親に無理矢理 参加させられて、ガキ共のお守りを任された。 まぁ嫌々だったけど。
あの時、秋は学校の行事があって居なかったように思う。 歳の近い『カゲロウの血』だから会っておきたかったけど、まぁ仕方ねぇよ」




……うん、確かに秋さんは行事があったから集まりには来ていなかった。

というか、当時はまだ秋さんと会ったことが無かったから どういう人かもわからなかったけれど、親が『同じ力を持ったお兄ちゃんが居る』と教えてくれていた。

だから どんな人なのか見てみたいと思っていたし、色々話してみたいとも思っていた。

でも、結局会うことが出来なくて……あの時に凄く残念に思ったのを覚えてる。


……だけど、八峠さんのことはまったく記憶に無い。

というか、お守りしてくれた人が居たかどうかも覚えていない。


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