「幽霊なんて怖くないッ!!」
……魂の保管場所。
やっぱり私たちは、もうすぐ死ぬのかな……。
「……前は、どうやって抜け出したんですか?」
「暗闇の中に光が見えた。 その光を目指して歩いていたら、いつの間にか戻ってきてたんだ」
「光……」
「その光がなんだったのかは わからない。 だけどその光に助けられたのは確かだ。
……でも、今は何も見えない。 だから多分、今度こそ死ぬ時なんじゃねぇかなって思うんだ」
光の無い、闇の世界……。
私と八峠さんは随分長い時間 話しているけれど、光はどこにも現れない。
暗闇の先にあるのは、私たちの死……?
「……俺は死ぬかもしれねぇけど、お前は多分大丈夫だよ」
無理に笑顔を作ったような声で言った八峠さんは、私が返事をする前に言葉を繋げた。
「俺はカゲロウに殺されたけど、お前は違うだろ? お前はイツキとユキに力を渡しただけだ。
少し渡しすぎたみたいだけど、それはいずれ回復する。 ココに居る時間は長くなっちまうかもしれねぇけど、でも大丈夫だ」
「……」
「ハクとカゲロウの戦いもきっと終わってるよ。 もちろんハクの圧勝だ。
全部終わってさ、『カゲロウの血』はようやく解放されるんだ。 この先も幽霊は視えるだろうけど、もう奴らに襲われることは無い。
お前は普通の人間として生きていける。 この先ずっと、笑顔で過ごしていくことが出来るんだ」
八峠さんは、きっと笑っているだろう。
とても寂しそうに笑っているはずだ。
自分は死ぬ。 だけどお前は大丈夫。 そう言って笑ってる八峠さんは、とても悲しそうな弱々しい声だった。
「……八峠さんも、大丈夫です」
暗闇の中で彼を想い、静かにそう言った。
「八峠さんはまだ死にません。 だって、50年後も私の隣に居てくれるんでしょう?
八峠さんが死ぬわけないですよ。 こんなところで弱音を吐いてる暇があったら、さっさと戻ってカゲロウを倒してください」