「幽霊なんて怖くないッ!!」
……弱気な八峠さんは、私の知ってる八峠さんじゃない。
『俺は死ぬかも』と無理に笑顔を作って言うなんて、そんなの八峠さんじゃないよ。
「光を待っても来ないなら、自分で光を作ればいいんです。 自分で作れないって言うのなら、私が作ります。
私が八峠さんの光になって、一緒にこの世界から抜け出しますっ!!」
後ろ向きだった私を前へと進めてくれたのは八峠さんだ。
その八峠さんが後ろ向きになったら、今度は私が前へと引っ張っていく。
私は、生きるって決めたんだ。
大切な人を亡くした今、その人の分まで精一杯に生きるって決めたんだ。
「一緒に戻りましょ、八峠さん!!」
「……まったく、お前は……やっぱり俺と寝たいのか?」
「へ? あ、えっと……私はただ、八峠さんと一緒に闇から抜け出したくてっ……」
「……祥太郎でいい」
「……え?」
「八峠じゃなくて祥太郎(ショウタロウ)でいいっつってんだよ。
……ほら、さっさと帰るぞ。 こんなところで油売ってたら、ハクに何言われるかわかんねーからな」
──その言葉のあと、暗闇に一筋の光が射した。
「あっ……」
数メートル離れた場所に、八峠さんが居る。
私に手を伸ばす彼は無言だったけれど、それでも吹っ切れたような顔をしていた。
「……戻りましょう、祥太郎さんっ!!」
彼の名前を初めて呼び、そばに駆け寄って手を握り締める。
一筋の光が段々と大きなものになり、闇は光の中へと消えていく。
光に体が包まれた瞬間、私は意識を失ってしまったけれど、それでも彼の手だけはずっとずっと握り締めていた。