「幽霊なんて怖くないッ!!」


ユキさんの目からポロリと涙が落ちる。


……彼女は生きる。 そして、いつか死ぬ。

それが人生というものなんだから、それを受け入れて進んでいくしかない。


誰かが死ぬということは、凄く悲しいしツラいものだけど。

でも、それでも私たちは生きていくしかないんだ。






「……キミは、八峠と同じことを言うね」

「え……?」

「『人が人の命を奪うなんてダメ』、か……。 残念だが、俺はそれを受け入れることは出来ないよ。
残念だ。 非常に残念だよ、双葉 杏」


「……っ……」




カゲロウと距離があったのに、まばたき をした次の瞬間に、彼は私の目の前にまで迫っていた。




「お前の力をもらう。 そして俺は、雪と共に生きていく」




……殺される。

何も出来ないまま、私は命を奪われる……。




「さよなら、双葉 杏」




気を纏ったカゲロウの拳が、真っ直ぐ私へ……──。








「大丈夫、あとは僕がやる」

「……っ……」








──……薄暮、さん……?


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