「幽霊なんて怖くないッ!!」
あの時のように。
八峠さんの家で幽霊を倒した、あの時のように。
大丈夫。 幽霊なんて怖くない。
……ううん、本当は怖いよ。 最高に怖いよ。
怖いけどさ、でもッ……──!!
「──……ここでやらなきゃ、ダメなんだっ……!!」
……私は、守りたいんだ。
みんなのことを、みんなとの時間を、この先の、未来を。
──『『カゲロウの血』は そういう運命なんだよ』
……秋さんはそう言っていた。 でもね、違うんだよ。
運命は変えられるし、自分で作っていくことも出来る。
私はカゲロウに負けない。
カゲロウに奪われたりしない……!!
「いいね、双葉ちゃん!! 俺も負けないよっ!! よっしゃ、どんどん来いやぁー!!」
「ちょっと氷雨っ、それ私の獲物っ!!」
「早いもの勝ちっしょ!! 雨音さん後ろから2体ッ!!」
「お 母 さ ん と、呼びなさいっ!!」
そんなやり取りをしながら、雨音さんと氷雨くんは抜群のコンビネーションを見せている。
もう20体以上は倒しているだろうか?
正確な数はわからなかったけれど、それでも彼らのそばの敵は確実に減っている。
「杏さん、右2体と後ろ1体ッ」
「うんっ!! 大丈夫っ!!」
私と薄暮さんもまた、連携を取りながら着実に数を減らしていた。
まだ大丈夫。
まだ戦える。
足手まといにはなっていない。 ……と思いたい。
「ゴメン、2分だけ なんとか持ちこたえてっ」
「はいっ!!」
2分。
そう言った薄暮さんは、私の返事の前にその場から離れ、カゲロウの元へと飛んでいた。
「絶対逃がさない。 絶対に倒すっ」
「その傷で? ふふっ……今にも死にそうじゃないか」
「でもまだ死んでないッ」
風が吹き荒れ、落ち葉が舞う。
地上では私たち3人が幽霊を戦い、木々の上では薄暮さんとカゲロウが戦っている。
他のことを見る余裕は無い。
薄暮さんはきっと大丈夫。 だから私はただ、自分を守るために目の前の敵を倒すだけだ。
「双葉ちゃんっ!! 右方向ッ!!」
「……っ……」
ちょっ……意思を固めた直後に5体同時!?
カゲロウは、どんだけ私を殺したいんですかっ……!!
(……やっばい、私死ぬんじゃない?)
目の前の敵に、勝てる気がしない。