「幽霊なんて怖くないッ!!」


走って走って、走りまくる。

その途中で何度か敵と遭遇したけれど、あっという間に蹴散らしてまた走り続けた。




「八峠さんっ、いったいどこにっ……!?」

「ハクを助けるためだっ。 急げっ」

「ちょっ、転ぶっ……ぎゃっ!!」


「うわっ!?」




落葉に足を取られ、その次には石につまづいた。

……結果、大転倒。

前方を走っていた八峠さんを巻き込んでの転倒だった。





「おまっ……馬鹿かよ、この馬鹿っ!!」

「うぅ……八峠さんが速すぎるせいですよー……」

「お前が遅いんだっつーの。 ……ったく、怪我ねぇか?」


「なんとか、大丈夫……だと思います」




膝と腕の部分が少し痛むけど、大丈夫そうだ。

……でも、八峠さんに迷惑かけちゃった。




「……ごめんなさい。私、邪魔ですよね……」

「んなこと どうでもいいから、ほら、立って」

「どうでもいいって……さすがにヒドくないですか?」


「急いでるんだよ。 ハクがやられる前に、なんとしてでも届けなきゃいけないんだ」




私の体を引き上げながら、八峠さんは静かに息を吐き出した。

その瞳は、どこか遠くを見つめている。




「……ハクは、素手で戦ってただろう?」

「あ、はいっ」

「そりゃあさ、素手でも十分強いよ。 でも、アイツにはあの小刀が必要なんだ」




小刀……じゃあ、オサキが言ってた『例のモノ』って、薄暮さんの小刀のこと……?


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