「幽霊なんて怖くないッ!!」
「お前は死なないし、俺も死なない。 光は輝くよ」
「……はい」
もしもまた、闇に落ちたとしても。
それでも私と八峠さんは、きっとちゃんと戻ることが出来る。
「私が、八峠さんの光になります」
「おう」
「……八峠さんも、私の光になってくださいね?」
その言葉に八峠さんは返事をしなかったけれど、私を見て微笑んでくれたことが、多分 答えだと思う。
私は八峠さんの光になる。
そして八峠さんは、私の光だ。
「そこを動くなよ?」
「はいっ」
「よし、今からコレをぶん投げる」
八峠さんはまるで槍投げの選手のように小刀を構え、意識を集中させている。
木々が視界を遮っているけれど、彼の目には『何か』が映っているらしい。
「……ハク、動くなよ。 そのまま止まっとけ」
ゴクリ、と唾を飲み込む音が大きく響く。
小刀が薄暮さんのところに届かなければ、小刀に纏わせた私たちの力はすべて無駄になってしまう。
……チャンスは一度だけ。
小刀を放ってしまえば、もうやり直すことは出来ない。
「……届いてくれっ」
その言葉と共に、小刀が空へと放たれる。
光を纏った小刀は まるで弓から放たれた矢のように、あっという間に飛んでいってしまった。
「あとはハクに任せよう」
「……はい」
「疲れた。 滅茶苦茶疲れたわ」
「……ですね。 20時間くらい、ゆっくり眠りたいです」
「戻ったら寝よう。 寝飽きるまで、思う存分寝よう」
岩の上に寝転がった八峠さんと同じように、私も寝転がる。
「……今の凄かったですね。 どうやって投げたんですか?」
「利き腕に気を込めて ぶん投げた。 前にハクから教えてもらったんだよ、一カ所に力を集めて放てば、相当な威力になるってな。
今まで試したことは無かったけど、でも多分上手く行った。 多分、アイツに届いたよ」