「幽霊なんて怖くないッ!!」
ニコッと笑った薄暮さんは、どこからともなく取り出した小刀をそっと私に手渡した。
「多少の傷ならすぐに治りますので、どうぞ試してみてください」
「た、試すって……」
「腕の辺りを切ってみますか。 一番簡単だし、わかりやすいですから」
「い、いえっ……そんなことしなくても、信じますっ……!!」
上着を脱いで袖を捲ろうとしていた薄暮さんに、慌てて小刀を返す。
……躊躇うことなく言っているから、彼は本当に不老不死なんだと思う。
多少の傷ならすぐに再生し、死ぬことはない。
だから私に小刀を持たせて試させようとしたんだろうけど……人の体に傷をつけるなんて、そんなこと出来るはずがない。
「えっと……一瞬で窓の外に居たりとか、さっきの幽霊とのやり取りとか……そういうのを見て、なんとなく納得しました」
「あ、驚かせてしまいましたよね、すみません。 八峠さんが『やれ』と言ったので、つい いつもの調子で動いてしまいました」
「……あの、もしかして八峠さんも不老不死……?」
「いえ、先程も言いましたが、今 生き残ってるのは僕だけです」
「あ、そうでした……」
「まぁ、カゲロウも生きているので、厳密に言えば僕とカゲロウの二人ということになりますが」
え……カゲロウも、生きているの……?