「幽霊なんて怖くないッ!!」
みんなが笑顔で過ごせるような、そんな未来を守りたいんだ。
「……あんたは、本当に光のような男だな」
嘲笑するように言ったカゲロウは、木から降りたあとにユキさんを地面へと寝かせた。
……逃げる気は無し。
本気で僕を殺すつもりだ。
「俺はね、ずっとあんたが嫌いだったんだ」
「……」
「あんたの存在自体が気に食わなかったんだよ」
枝から枝へと身軽に飛ぶカゲロウを追い、こちらも移動する。
ユキさんから距離を取り、そこで戦うつもりなんだ。
……本当にユキさんのことが大事なんだな。
彼女に傷をつけないようにと、一生懸命なんだ。
「ユキさんのことを愛しているんだね」
「あぁそうとも。 雪が居るからこそ、俺は生きていけるんだ」
「……この先も、永遠に生きていくつもりなんだね」
「星の命が尽きるまで、俺たちは共に居るよ」
太くて立派な木の枝に立ったカゲロウと、そこから少し離れた木の枝に立つ僕は、お互いの視線を真っ直ぐに合わせていた。
……カゲロウは凄いな。 と、素直に思う。
そこまで彼女のことを想い、彼女もまたカゲロウを想っているだろう。
永遠の愛など無いと思っていたけれど、カゲロウとユキさんはそれを成し遂げようとしているんだ。
……凄いな、本当に。
応援したいなと思うし、僕に出来ることがあるのなら手を貸したい。とまで思ってしまう。
誰の命も犠牲にならないのなら、二人のことを心から祝福するだろう。
……けれど、ダメなんだ。
他人の人生を曲げてまで生きながらえるなんて、そんなのダメだ。
カゲロウのしてきたことを、許しちゃいけないんだ。