「幽霊なんて怖くないッ!!」
「ジャンジャカジャーン!! イツキくんを召還しちゃいましたー!!」
……と、彼女は言っているけれど。
小枝は何事もなく当たり前のように地面に落ちた。
「ギャー!? イツキくん小枝こになった!?」
「いやいや、元からソレは小枝ですよ」
……元気だなぁ。
いい歳したオバサンのはずなのに、俺より元気ってどういうことだ。
「もう1回っ!! えいっ!!」
「……」
「イツキくん、現れろー!!」
何度 投げても小枝は小枝だと思うけど、それでも雨音さんが辞める気配は無い。
……ていうかさ、イツキさんを召還とか言ってたけど、あの人はもう成仏したんじゃないか?
光の中に消えていったってことは、つまりはそういうことだと思うけど……。
「イーツーキーくーん。 助けてよー、こんな山奥で死にたくないよー。
私の恋人になって私を愛してよー。 一緒の布団で寝てよぉー……」
……あ、壊れた。
『雨音さんは、“ゆにーく”な人だねぇ』
「ユニークっていうか ただの馬鹿だよ」
『ふふっ、素敵な女性だよ』
全然素敵じゃないし、ただの馬鹿で変な人だよ。 と言おうと思ったけれど、それを言葉に出すことすら疲れるし面倒だった。
「……恋人とか そんなのはどうでもいいけど、助けて欲しいのは事実だな」
もうすぐ日暮れだ。
こんな山奥で夜を過ごすなんて、考えただけでげんなりだ。
あぁ、ふかふかのベッドの上で思う存分眠りたい。
薄暮さんが戻ってくれば瞬間移動で家に戻れるけれど、今のところ、戻ってくる気配は無かった。