「幽霊なんて怖くないッ!!」
「わおっ、イツキくん来たー!! 彼氏ゲットー!!」
「……俺は雨音に呼び出されたわけじゃないぞ?」
「え、そうなの? 小枝が変化(へんげ)したんじゃないの?」
「小枝が変化するわけないだろう。 俺をなんだと思ってるんだ?」
呆れた顔で雨音さんに近づいたイツキさんは、彼女が持っていた小枝を取ってひょいっとどこかへ投げ捨てた。
「薄暮 一縷が俺を呼び出し、俺にお前たちを助けるようにと命令した。
薄暮はココには戻らない。 だから俺がお前たちを町まで連れて帰るよ」
……え。
戻らない、って……なんでだ?
「イツキさん、薄暮さんが戻らないってどういうこと?
あの人はカゲロウに勝ったんだよね? なのにさ、なんで戻らないんだよ」
「さぁな、俺にはわからん。 俺はただ お前たちを町へ帰し、お前たちのそばに居るようにと命じられたから そうするんだ」
「いやいやいや、わかんねーってことないだろ。 ……なんでだよ。 あの人は、もう戻ってこないつもりなのか……?」
このまま、誰にも会わずにどこかへ行ってしまうのか……?
「……薄暮 一縷には薄暮 一縷なりの考えがある。 だから これ以上の追求はするべきではないと思う。
オサキギツネ、八峠たちの正確な位置がわかるか?」
『あぁ、わかるよ』
「ではそこへ飛ぶ。 俺に掴まってくれ」
そっと手を伸ばすイツキさんは、真っ直ぐに俺を見た。
『これ以上の追求はするべきではない』、つまりそれは『この話はこれで終わり』ということか。
「……あの人は死ぬつもりか? いや、死んだのか……?」