「幽霊なんて怖くないッ!!」
「あの……カゲロウはどこかで生きているんですか?」
「えぇ、生きてます」
「……でも、カゲロウは世界を自分の物にしようとしてるって言ってましたよね?
だけど世界はカゲロウの物にはなっていない。 人間は人間として普通に生きているし、動物たちだって、普通……ですよね?
カゲロウが生きているのなら、世界に何か変化があってもおかしくないと思うんですが……」
世界を自分の物にする。
つまりそれは『世界征服』ということ。
自分の力ですべての者を服従させ、世界を自分の物にする。
そういう意味……だよね?
世界のどこかでは戦争が起きているけれど、『カゲロウ』なんて言葉は一切聞かない。
カゲロウというのは、私の一族だけが知っている言葉だ。
まぁ、不老不死のことやカゲロウが呪術師だったなんて話は全く知らず、私たちは『カゲロウの血』という言葉を使ってるだけだけど……。
「カゲロウは今、どこかに身を隠しています。 300年ほど前……僕はカゲロウを仕留め損ねたんです」
「え……」
「あと一歩というところで逃げられ、それっきり行方が掴めていないのです。
だけど彼は生きている。 『カゲロウの血』が狙われ続けているのが、何よりの証拠です」
……彼の生存と『カゲロウの血』には、何か関係があるの……?
と、それを訊ねようと思った時、薄暮さんの上着のポケットから携帯の着信音が聞こえていた。
「はい、もしもし」
上着に袖を通しながら電話に出た薄暮さんは、『はい』『はい』と繰り返し、すぐに電話を切った。