「幽霊なんて怖くないッ!!」
「すみません、少々喋りすぎてしまったようです」
「あ、いえ……私、もっと色々聞きたいなって思ってました。 もっと、色々なことが知りたいです」
「では、後ほどまたお伺いしますね」
「へっ?」
「僕は外で警備をするのが仕事ですので、その仕事に区切りがついたら また来ます。
あぁそうだ、ご両親には僕らと接触したことは話さないでくださいね。 家の結界が無くなったと知ったらパニックに陥りますし、僕の身分も明かしたくはありませんので」
スーツの襟をビシッと決めたあと、薄暮さんはまた優しく微笑んだ。
「宮司の息子である秋さんは僕の存在自体は知っていますが、不老不死の話はしないようお願いします。
僕は八峠さんの弟子……というか秘書ですね。 それ以上でも以下でもない、そういう人間だと思っていてください」
「あ……はいっ……」
「ではまた来ます」
その言葉の直後、薄暮さんは一瞬にして姿を消した。
多分、今はもう家の外……。
憎悪の塊みたいな幽霊が居たら、きっとさっきみたいにするんだと思う。
あえて体の中に取り込み、そこから原因となっているモノを取り出す。
……薄暮さんがやっていたアレは、除霊というのだろうか?
他の呼び方がわからないから、そう呼ぶしかないんだけれど……あのやり方って、体に負担がかかったりしないのかな。
一瞬だとしても、幽霊が自分の体の中に入ってくるなんて、想像しただけでも気持ちが悪い。
それでも薄暮さんは、幽霊を体の中に……?
(……不老不死でも、痛みや苦しみは当然感じるよね……?
私が八峠さんに連絡したせいで、薄暮さんにツラい思いをさせてしまってるんじゃないかな……)
そう思いながらも、今の私には何もすることが出来なかった。
二階にある自分の部屋へ行き、窓を開ければ夕日に反射して海がキラキラと輝いている。
いつもと同じ夕暮れの、いつもと同じ海。
それを見つめながらも、私はどこかに居るだろう薄暮さんを静かに探し続けていた。