「幽霊なんて怖くないッ!!」


──それから私と秋さんは10分くらい話をしていたけれど、『もう遅いから』ということで電話を切ることにした。

明日は休日だけど、神社で働いている秋さんに休日は関係ない。

むしろ休日こそが仕事だ。


『何かあったら連絡しますね』と いつものように言って、私は秋さんとの電話を終わらせた。






「僕のことを黙っていてくれて、ありがとうございます」

「うわっ……!?」




突然、ドアの前に人が現れた。

その人はにっこりと笑ったあと、最初に会った時と同じように礼儀正しく頭を下げた。




「は、薄暮さんっ……」

「遅くなってしまってすみません。 八峠さんと色々話していたら、こんな時間になってしまいました」




上着を脱いだ薄暮さんは、ネクタイを緩めながらイスに腰かけた。

彼の動作すべてが何故だかとても色っぽく、ついつい目で追いかけてしまう。


ニコッと笑った薄暮さんと目が合った時、私は慌てて視線を泳がせた。




「あ、あのっ……幽霊は、やっぱり多く集まってきてましたか……?」

「いえ、予想していた数より少なかったです。 それに、最初ほど凶悪なモノも居ませんでした」

「そう、だったんですか……。 えっと、ありがとうございます……」


「いいえ、こちらこそ。 僕との約束を守ってくれたので、安心しました」




約束。というのは多分、秋さんに薄暮さんの正体を黙っている。という話のことを言っているんだと思う。

……『多分』というか、『絶対』だ。


だからこそ彼は、部屋に入った直後に『僕のことを黙っていてくれて』と言ったんだ。


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