「幽霊なんて怖くないッ!!」


もちろん、『カゲロウの血』を持った人すべてが子供時代に亡くなったわけではない。

家庭を持って幸せに暮らしてる人も居るし、平均寿命以上に生きた人も居る。


……でも、そうやって普通に暮らしている人は“まれ”だ。


子供時代を生き残っても、20代でほとんどの人が亡くなっている。

事故、病気、自殺……それぞれ違う理由でだったけれど、私たちの間では『カゲロウの血だから』と言えば皆が納得する。

そういうものだった。






「秋さんっ……!!」




石段を上りきり、息を切らせながら鳥居をくぐった。

大丈夫、ここまで来れば大丈夫。




「ハァ……ハァ……ハァ……」




息を整え、唾を飲み込む。

ゆっくりと振り返ると、黒い塊が鳥居の外で飛び回ってるのが視えた。




「杏ちゃん。 また連れて来ちゃった?」

「……ごめんなさい、秋さん。 小さな子供だったので、つい……」

「そっか。 でもここに居れば大丈夫」




社務所から出てきた秋さんは、私ににっこりと笑いかけてから黒い塊を視る。




「あとで飛ばしておくね。 今度からは、見た目に騙されないように注意するんだよ?」

「……うん、そうします……」




秋さんの言葉に深く深く反省しながら、もう一度黒い塊を見つめた。


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