「幽霊なんて怖くないッ!!」
「……痛ッ」
「あ、悪い。 優しくしたつもりだが、痛かったか?」
「痛いですよっ!! ていうか、いきなり何やってんですかっ!!」
──……『ブチッ』という効果音と共に、後頭部に痛みが走る。
慌てて体を離して八峠さんを見ると、彼の手には3、4本の髪の毛が。
「ちょっ……髪の毛を抜くなら抜くって言ってくださいよっ……!!」
「言ったら抜かせてくれないだろ」
「だからって突然抜くなんてどういう神経してるんですかッ!? ていうか、事前に言ってくれれば普通に髪の毛渡しますからっ!!」
「あぁそうか、スマン。 お前の髪の毛、頂戴したぞ」
「事後報告とか要りませんからっ!!」
……なんなんだ、この人は。
なんで突然髪の毛を抜きやがったんだ。
しかも同じような場所からまとめて抜くとか……今もまだ痛いんですけど……。
「もぉ……私の髪の毛を抜いて、いったいどうするつもりですか……」
「身代わりの身代わり、だ」
「……はい?」
「藁人形って知ってるか? アレにな、お前の髪を仕込むんだ」
藁人形……って、『丑の刻参り』のやつだよね?
憎い相手に見立てた藁人形に釘を打ち込む、アレのことだ。
でもアレって、呪いをかける側のものじゃないの……?
藁人形に憎い相手の髪の毛とかを入れて釘を打ち、呪いをかける……というのはよく聞く話だ。