「幽霊なんて怖くないッ!!」
……この人は、本当にカゲロウを殺す気だ。
そのために私は利用される。 ……そして多分、カゲロウが私を殺しても、この人は私のことなど少しも気にすることなく目的を果たすために動くと思う。
私は囮。 この人にとっては、それ以上も以下もない。
『八峠クン、顔が怖いです。 そんな顔じゃあ女の子にモテないですよ?』
……冷たい空気の流れていたところに、オサキの呑気な声が聞こえてきた。
オサキは私の横に座った状態のまま口元に笑みを見せ、尻尾を滑らかに動かしている。
「……おいオサキ、馴れ馴れしい呼び方をするな」
『本来なら、それはこちらのセリフですよ? 何せ僕は500歳を越えていますから』
「あーそうかい、そりゃあどうもすみませんでしたね」
『分かればよろしいっ』
「……無駄に偉そうだな」
……オサキとのやり取りの中で、八峠さんは私の知っている八峠さんへと戻っていく。
その後、初めて会った時と同じように面倒臭そうな顔をし、オサキと会話するのに疲れたのか『じゃあな』と言ってすぐに部屋を出ていった。