「幽霊なんて怖くないッ!!」
『僕は杏チャンが死んじゃったらイヤだな。 だから、一縷さんに言われた通り杏チャンを隠すよ』
「え……?」
『僕は結界が張れるんだ。 というか、長い月日の中で結界を張る方法を見つけたんだ。
だが僕の結界は普通の結界とは違う。 普通の結界は、こう、輝いているだろう? だが僕の作る結界に色は無いんだよ。
僕はそこに居るけど、相手には何も見えない。 そちらの言葉で言う『透明人間』みたいなものだね』
透明人間……周りから全く認識されない結界を、オサキは作れるというの……?
『すぐ済むから、ジッとしていてね』
「わっ……!?」
オサキの小さな体が、私の体の上を駆け回る。
それは段々とスピードを増していき、目で追うことは難しくなってきた。
体の回りで風が吹き荒れ、思わず目を閉じる。
「オサキっ……」
『はい、終了』
「……えっ?」
ゆっくりと目を開けると、オサキはさっきと同じ場所にちょこんと座って私を見ていた。
……さっきと同じで、何も変化はないような気がするけれど……。
『何も変わってないと感じるだろうけど、今はもう彼らには僕たちの姿は見えていない。
だから、ほら。 幽霊たちが藁人形に寄ってきたよ』
「……っ……」
──真っ黒い塊が、藁人形の近くに集まってきている。