「幽霊なんて怖くないッ!!」
小さくなった黒い塊が、弾丸のように私の方に向かってくる。
──殺される。
そう思って咄嗟に目を閉じたけれど、ソレがぶつかってくることはなかった。
『このぐらいなら防げるから大丈夫』
オサキのその声を聞き、目を開ける。
……黒い小さな塊は、オサキの張った結界にぶつかっていた。
透明の結界が、ソレらの侵入を全て防いでいる。
「あーぁ、やっぱりこの体じゃ無理か」
……小さくなった塊が、再び人間の体の形へと戻る。
けれどそれはカゲロウにはならず、黒いブヨブヨが不規則に動いているだけだった。
「まぁでも、目的の1つは果たしたから よしとするか」
「……目的?」
「あぁ、お前をここに連れてくることが出来た。 だから成功だ」
目的……薄暮さんをここに連れてくることが、目的……?
──薄暮さんは八峠さんと一緒に『カゲロウの血』を……幼い双子を守っていた。
そしてカゲロウの目的は、『カゲロウの血』を狙うこと……。
「……薄暮さんっ!! カゲロウの本体は、双子のところへっ……!!」
「ふふっ、勘の鋭い子だねぇ。 そういうの、嫌いじゃないよ」
塊が三日月型にニヤリと笑う。
その笑みが、彼の『目的』を物語っている──。