「幽霊なんて怖くないッ!!」
……ベンチに座っている八峠さんは、隣に来るよう視線で促す。
だから私は、恐る恐ると彼の隣に行き、静かに座った。
「お前さぁ、」
「……ごめんなさい」
「いや まだ何も言ってねぇし」
「……すみません」
視線を合わせるのが怖くて、私は八峠さんの足下ばかりを見ていた。
彼のスニーカーは色褪せていて、今にも穴が空きそうなくらいにボロボロだ。
新しい物は買わないんだろうか? と思いながらも、それを口に出すことはなく、静かに座っていた。
「お前さ、幽霊のこと怖い?」
「……そりゃあ、怖いですよ……」
「川で溺れそうになったり山で遭難しかけたり、車に轢かれて死にそうになったからか?」
「……はい」
私は今まで色々な体験をしてきた。
体験したくはなかったけれど、体験してしまった。
その際に相当イヤな目に遭ってるし、何度も死にかけた。
……それを八峠さんに話したことはないけれど、彼は私の情報をしっかりと持っているらしい。
「……八峠さんは、私のこと なんでも知ってるんですね」
「霊が絡んでるものだけはな。 他はなんも知らないし、別に知りたいとも思ってないよ」
「……あ、そうですか」
「なんだよ その不服そうな顔。 お前は、俺に色々なことを知ってもらいたいのか?」
「別に、そういうわけじゃないですけど……うーん、なんだろう……知ってもらいたいっていうか、むしろ知りたい、みたいな?」
「俺のことを?」
「はい」