「幽霊なんて怖くないッ!!」


懐かしそうに目を細める彼は、とにかく穏やかで、あったかな声をしていた。

面倒臭そうな顔じゃないし、ニヤリとも笑っていないし、怒ってもいない。


そんな風に微笑む八峠さんを、私は初めて見たかもしれない。





「俺の前に現れたアイツの第一声が『あなたの人生を僕にください』だった。
なんだコイツ頭おかしいのか? って思ったし、関わりたくないからすぐ逃げたよ。 まぁすぐに捕まっちまったけど。
で、色々と話を聞くうちにカゲロウのことを知ったし、アイツが不老不死だってことも知ったんだ」

「そう、だったんだ……」

「最初は当然 信じられなかったけど、アイツは300年前のことを当たり前のように話して、俺の質問にもすぐに答えてた。
それがその場で作った答えだとは思えなかったし、何よりもアイツの目は凄く真剣だった。
嘘偽りなど無く、アイツは俺の力を求めている。 だから俺はアイツを信じようって思ったんだ」




そう言いながら、八峠さんはポケットから静かにタバコの箱を取り出した。

……今までタバコを吸ってるところなんて見たことが無かったし、タバコの臭いもしてはいなかったけれど、それでも今、八峠さんはタバコをくわえて火をつけた。




「まぁ、ハクと一緒に行動するようになったのは3年前だけどな。
アイツは俺の動きをどっかで見てただろうけど、姿は現さなかった。
時々手紙は来てたけど どこで何をやってるのかは全くわからなかったよ」

「……出会ったのは10年前で、一緒に行動するようになったのは3年前……。
どうして7年経った時に、薄暮さんと一緒に行動しようって思ったんですか?」

「その頃に親父が事故に遭って死んじまって、その僅か1ヶ月後に、今度はお袋も事故に遭って呆気なく死んじまったんだ。
……実はさ、俺の両親って二人とも『カゲロウの血』なんだ」


< 77 / 285 >

この作品をシェア

pagetop