「幽霊なんて怖くないッ!!」
薄暮と陽炎
空は茜色へと変わってきた。
門限は無いし、家に帰ってもすることが無い。
そんな状態だから、八峠さんが起きるまでのんびりと待っていよう。
そう思いながら花壇を見つめる。
芝生の手入れもお花の世話も、全部薄暮さんが
やってくれてるのかな?
八峠さんは家が掃除されてることを知らなかったみたいだから、薄暮さん独自の判断……ってことだよね。
芝生はともかく、花壇のお手入れをしている薄暮さんを思い浮かべると、自然と笑みがこぼれ落ちる。
「あ、そういえば……オサキはまだ秋さんのところなんだよね」
公園で別れて以来、オサキは戻ってきていない。
今頃は、秋さんと楽しくお喋り中かな?
「薄暮さんは、双子のところ……だよね」
普段は八峠さんと交代で双子を見てるらしいから、八峠さんがここに居る今は、当然薄暮さんが双子を見てるということになる。
「……薄暮さん、元気かな」
私の部屋でカゲロウ“だったモノ”を小刀で切り刻んだあとに姿を消した薄暮さんは、その日の夜に部屋へとやってきたらしい。
……『らしい』という曖昧な言葉で表したけれど、本当に『らしい』としか言いようがない。
私が眠ったあと、薄暮さんは私の部屋にやってきたらしい。
翌朝起きると枕元に置き手紙があって、『清めておきました』という言葉が残されていたのだ。
そういえば姿を消す前に『あとで室内を清めておきます』って言ってたっけ。 と、その時に思い出し、部屋の中をグルリと見たけれど 違いはよくわからなかった。
……薄暮さんは、あの日以来 私の前には姿を現していない。