「幽霊なんて怖くないッ!!」


………

……




その後、私たちは30分くらい砂浜をブラブラと歩いた。

太陽は完全に沈み、遠くに見える街の明かりが僅かに届いているけれど、それ以外の明かりはほとんど何も無かった。




「……海に来たのって、久しぶりだなぁ」




制服に砂がつくのもお構いなしに、直接砂の上に座る。

そんな私の隣に来た薄暮さんは、『僕もです』と優しい声で言った。




「海は色々思い出すから、あまり来ようとは思わなかったんです」

「……それって、さっき言ってた仲間のことを思い出すからですか?」

「えぇ、みんなでよく来てました。 というか、海のすぐ目の前に住んでいたので」




……それがいつの時代の話なのかはわからない。

わからないけれど、薄暮さんの声はとても穏やかで、懐かしそうだった。





「仲間の名前は、不知火(シラヌイ)、暁(アカツキ)、時雨(シグレ)、凪(ナギ)、そして……陽炎(カゲロウ)。
僕ら6人はいつも一緒に居たし、不老不死の水を飲んだ時も一緒に居ました」

「……その時に、カゲロウが……」

「はい。 カゲロウはまず不知火を手にかけました。 不知火は仲間の中で一番力のあった大男でしたが、無防備な後ろから首を斬られてはどうしようもありません」




……淡々と言葉を繋げていく薄暮さんの声は、もう懐かしさや穏やかさは残っていなかった。

感情の無いロボットのように、そこにある文字を読み上げているだけ。 そんな風に聞こえた。




「カゲロウは、『不老不死でも殺されれば死ぬ』ということを試したんです」

「……大切な、仲間だったのに……?」

「僕にとっては大切な仲間でしたが、カゲロウにとっては違ったのかもしれません。
次に狙われたのは僕です。 他は皆 女性でしたので、絶対に勝てると自信があったんだと思います」




……その時に、薄暮さんは逃げたのかな……?

女の人たちを残して、たった一人で……。









「……僕はカゲロウに殺される寸前でした。 それを助けてくれたのが、暁です」


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