最後の世界がきみの笑顔でありますように。~last story~
「陽………?陽っ!!」
声が聞こえた。
うっすらとしている意識が少し覚醒する。
目を開ければ、そこには地面に這いつくばり、俺を探す幸ごいた。
「…さ……ち………。」
細い声がしか出ない。
それでも、俺はここにいると伝えたかった。
「…陽っ!!…陽!!」
何度も名前を呼ぶ幸が見える。
また、泣いてる………
馬鹿だ、そんな不安そうにして……俺なんかより、幸は大丈夫なのか?
勢い良くぶつかったから、目の見えない幸にはすごい衝撃だっただろう。
それでも、動けてるみたいで良かった……
「…さ…ち…無事で…よか…。」
幸は俺に手を伸ばす。
その不安そうな手に俺は必死に手を伸ばした。
「……さ……ち」
「陽っ!!」
その手を掴むと、今度はその手を幸に両手で包み込まれる。
あったけぇ……な……血の気が失せていく体に、熱が戻るようだった。
「…はぁっ…無事…良か…った…。」
この温かさが、幸が生きていることを教えてくれる。
ひどく、安心した。
「何言って…自分の心配してよっ…。」
その言葉に笑ってしまう。
幸も、自分の心配をしろよ。
「…こ……れ……。」
すると、幸は俺の手についた血の感触に声を震わせる。
「…う、嘘っ……嫌だ…陽っ!!」
悲痛に泣き叫ぶ幸に俺は悲しくなった。
俺は、こんな幸を置いていくんだな………
これから、始まるのだと思ってた。
「…泣く…な……。」
幸の手を弱々しく握り返す。
泣くな、といいながら、俺も泣きそうだった。
幸と離れるのが苦しい。
辛い、怖い………