続・迷惑なイケメンに好かれました。
「何やってんだろ、私……っ」
そう呟いた震えた声が、風に掻き消されるほどに、私は必死に走った。
視界が歪んでも、思い切り唇を噛み締めて、ひたすら足を動かした。
どこか行きたい場所があるわけじゃない。
それでも私はどこかへ行きたかった。
ーー今の出来事が嘘だったんだと私を安心させてくれるような、存在するわけがない場所に。
怖い。怖くて堪らないんだ。
頭の片隅にあった、あの日の記憶が再び蘇ってきて、また私から大切な人がいなくなっちゃうんじゃないかって。
神様が今度は海を連れて行ってしまうんじゃないかって。
「待ってよ、柳瀬さん……っ!」
そんな声と共に手首を掴まれる。
後ろに引っ張られるようにして、私の足は動きを止めた。
……違う。
欲しい温もりは、声は、追いかけて来て欲しい存在は、これじゃない。