続・迷惑なイケメンに好かれました。



ーーこんなに苦しいなら、最初から出会わなきゃ良かった。

ドラマなのか、漫画なのか、一度は聞いたことがある台詞。


そんなこと、あるわけがないって思ってた。


だってどれだけ苦しくたって、幸せなことや楽しいことだってきっと数え切れないくらいにあったはずなのに、それも無かったことになってしまうから。





「でも、海に出会って、好きになって、幸せだったから、そんなこと思うの間違いだって言い聞かせた。それなのに、それなのに…っ」





だけど目の前の莉子の姿に、分からなくなる。


もしかしたら本当に、出会わなければ良い相手だっているのかもしれない。

その方がずっとずっと幸せなこともあるのかもしれない。


そんなことを本気で思ってしまうほど、目の前の莉子は弱々しくてーー。





「……でも、海に会って今こうやって少し話して分かった」


「莉子?」





莉子の体の震えが治まって、ゆっくりと顔を上げて、俺と視線が交わると彼女は笑った。

穏やかで、優しくて、まるで花が咲いたような、俺が好きだった笑顔で。


だけど俺はひどく胸騒ぎがした。

今の一瞬で彼女を纏う何かが、変わった気がする。





「何勝手に自分だけ幸せになろうとしてるの?」






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