強がりウサギの不器用な恋
クアラルンプールに着く頃には、もう夕方で。
ホテルにチェックインを済ませると、二人で夕飯を楽しむことにした。
街の中のレストランに入り、現地のマレー料理を人生で初めて食す。
なんだろう……
この、スパイシーなソースのかかった鶏肉料理が絶品だ。
「とりあえず、仕事は明日一日で終わらすぞ。」
豪快に料理を口の中に入れて頬張りながら、海藤さんが至極当然のように言う。
明日は先方とアポを取っている。
すぐに話が纏まるのならば、こちらも願ったり叶ったりなのだが。
「話によっては、明後日までかかるかもしれませんよ。」
「それは嫌だね。操はマレーシアは初めてだろ?」
「…ええ。」
「俺も初めて。どうせなら楽しんで帰ろうぜ。」
楽しんで、って……仕事で来たことをもう忘れてやがるな。