強がりウサギの不器用な恋
「あ、ごめんなさい!」
衝動的に後ろを振り返って、ぶつかったことを謝れば、
そこに立っていたのは海藤さんだった。
だけど私は、その後何も言えずフリーズしてしまう。
――― こんな顔の彼を見たのは初めてだ。
呆れた表情の上に、怒りの色がありありと乗っている。
海藤さんはすぐに私とその男性の間に割って入り、私を背中に隠すような体勢を取る。
そして流暢な英語で何かを話しかけ、その男性と短い会話をしていた。
海藤さんの低い声色に圧倒され、男性がまるでわかったよ!とでも言うようにこの場を去っていく。
その瞬間、穏便に何も揉め事がなかったことに安心して、私は胸を撫で下ろした。