強がりウサギの不器用な恋
「……無事でよかった。」
頭の上で海藤さんの声がする。
その声が、とてつもなく切ない響きで………
きっとこの人なら私を必死で守ってくれるのだろうと思うと、安心感からか胸がいっぱいになってきて、心臓がギュッと鷲づかみされたように苦しくなって………
彼の素肌の背中に手を回し、自分の身を自然に委ねた。
「……ナンパされて何かあったら、社長もさすがに怒るでしょうね。」
何故だかこの状況なのに、「何やってんだよ。」ってしかめっ面をした社長の顔が咄嗟に頭に浮かんで。
抱きしめられながら、彼の胸の辺りでもぞもぞとそう口にすると、盛大な溜め息がこれでもかと頭の上に降って来た。
「今、真吾は関係ない。」
「………そう、ですね…。」
はっきりとした口調でそう言われれば、さらに私を抱きしめる腕の力が強まった。