強がりウサギの不器用な恋
「違いますよ。あのときも平気だって言いましたよね?」
全く、この人は。
何でもかんでも、私の悩みの種を社長と結びつけるのはやめてもらいたい。
「帰りますから、放してください。」
ガッチリと掴まれたままの腕を振り払おうとするが、どうにもこの男は放すつもりはないらしい。
「昨日、一晩中泣いたのか?
そんな女を、このまま放っておけるかよ……」
封印されていたはずの、この男の色気が久しぶりに振り撒かれた。
そう感じるほど、低い声に優しさと切なさと包容力が入り混じる。
このままその胸に飛び込んでしまいたいと……そう思えるほどの威力だ。
だけど。