強がりウサギの不器用な恋
どうやら……私と寝たことを、記憶にはとどめてくれているようだ。
彼の中で、なかったことにはしていない、ということで…私は受け取っていいのだろうか。
「強引では……なかったです。全然強引なんかじゃ…」
あの夜の彼は、この上なく優しかった。
骨ばったゴツゴツとした手で、どうすればそんなに優しくできるのかと思うくらい、私の身体を優しく撫でてくれて、抱きしめてくれた。
「海藤さんは、優しかったですよ。ずっとずっと優しくて、」
「ストップ、ストップ!」
私の頭に乗せられていた手が滑り降りてきて、私の口元を塞ぐ。
「それ以上言うな。反則だろ。…自制が効かなくなる。」
それだけ言うと、タイミングよくやって来たエレベーターに彼は乗り込み、迷うことなく「閉」のボタンを押した。
結局私は………肝心なことは何一つ訊けないまま。