強がりウサギの不器用な恋
そのまま下に降りていくエレベーターを見送ると、私は踵を返してとぼとぼと事務所へ戻った。
社長は自分のデスクに座ったまま、机の上で手を組んで、無表情にボーっとしている。
私が戻ったことに気がつくと、ハッとして視線を私のほうへ向けた。
「…飛向は?」
そう訊かれたけれど、無言で首を小刻みに横に振る。
すると社長から、小さく溜め息が漏れた。
「あーあ。…飛向に怒られちまったな。」
社長の顔に哀しみの色が乗り、私にまでそれが伝染して切なくなってくる。
「社長が悪いわけではありませんよ。海藤さんは、勘違いをしています。」
そう。先程の怒声事件は、彼の勘違いによるものだ。