強がりウサギの不器用な恋
まるで、死刑執行を待つような気持ちだ。
いつ海藤さんの口から結婚すると言われるかわからないから、毎日気持ちを凛と保つようにしていて、それだけでも疲れる。
もういっそのこと、さっさと言ってくれないだろうかとさえ思う。
彼女が妊娠したから、結婚する、と。
そうすれば、一度地の果てまで陥落するだろうけれど、私も今のモヤモヤ状態から一つ区切りがつけられると思うのに。
「あの二人がいないと、ものすご~く静かっすよね。」
私にそう声をかけるのは大林くん。
今、事務所には私と大林くんしかいない。
大手の会社から取引がしたいと言われ、社長と海藤さんは本日二人で名古屋に日帰りで向かった。
「社長、行きたくないってブーブー言ってましたね。」
「奥様の出産予定日が明日だからね。ここを出来るだけ離れたくないのよ。」