強がりウサギの不器用な恋
相手が大手の会社なのに、入社して半年未満の海藤さんが一人で商談しにいく、というのも荷が重く。
予定は日帰りだし、名古屋なら陣痛が起これば新幹線ですぐに戻ってこられるからと、私が社長を説き伏せた。
とは言うものの。
まだ産まれないでいてね、とこの場で手を合わせて赤ちゃんに念を送る。
社長も立会い出産を望んでいるし、奥様だって初産ですごく不安なことくらい、同じ女としてわかるから。
「大林くんも、もう上がっていいよ。
今日暇だし、私も時間になったら帰るから。」
今日は金曜日だというのに、仕事が暇だ。
さっきから数時間、電話すら鳴らない。
「わかりました。お先に失礼します!」