強がりウサギの不器用な恋
今の私は、会社で仕事の話をするしか社長と接点はなくなった。
ボランティアも、ましてやプライベートなんて全然ノータッチ。
だから今の社長が、会社以外でどんな風に振舞うのか。
どんな顔で笑うのか、私は知らない。
知っているのは、あの頃の……まだ大学生だった頃の“渡辺先輩”だ。
「よーし! 行くぞー!」
ロープウェイ乗り場に到着すると、車を降りた瞬間、社長がテンション高い声を上げる。
こういうところはまるで子供みたい。
「俺、ちょっと高所恐怖症なんですよねー。」
「だーいじょうぶだって!
怖いなら、俺がずっと手でも握っててやろうか?」
「いいですよ! 男同士気持ち悪い!」
バイトの西田くんが高所恐怖症だと訴えれば、社長は西田くんと肩を組んで明るく茶化す。